今年に入ってから、米国のトランプ大統領が打ち出している輸入関税は、ほぼすべての国の経済活動を脅かしている。エコノミストや企業経営者の多くは、異常に高い関税に強く反対の意を示しており、世界経済が崩壊すると警告している。彼らはまた、急激な税率だけではなく、米国への不法移民の締め出しにも声高に反対している。
関税と不法移民の問題は視点は異なるが、根底に横たわるものは同じと思われる。ご存知のように、トランプ大統領は、米国の巨額貿易赤字、ウクライナへの軍事支援を含む膨大な対外財政援助、流入する不法移民、これらすべてが米国社会に経済的、社会的問題をもたらしていると批判している。彼はさらに、米国は横行する不法移民とその関連諸国によりその肥沃な大地から膨大な利益が搾取されているため、国として無法地帯になりつつあると主張している。おそらく米国の中産階級は、この点においては賛成であり、トランプ氏がウクライナのゼンレンスキー大統領に対し米国への感謝を強要したことも、後者が具体的な見積りや使用明細を示さずに巨額の財政支援を要求し続けていることを考えれば、賞賛に値すると考えていることだろう。
トランプ氏の言説の核心は、彼が何度も繰り返すように、米国民のプライドと自尊心を取り戻すことであり、それは確固とした国家のアイデンティティーに依拠しなければならないということだ。彼の心中を解き明かせば、次のようなストーリーに要約できるのではないか−「あるところに富裕な家の持ち主がいた。その人はとても気さくで見知らぬ人が訪ねてきてもいつも喜んで迎え入れ、無料で宿泊や食事、諸々の世話までしてくれたそうだ。そのうちに噂を聞きつけて訪問者は増え続け、彼らは主人の予想外のホスピタリティと寛大さに次第に慣れ親しんでしまい、ついにはもっと大きなもの、金銭や調度品などを際限なく求めるようになった…」
このような状況において、件の訪問者の絶え間ない要求に公平さや正義はあるだろうか?家の主人は自分の財産がなくなるまで彼らに奉仕しなければならないのだろうか?その答えはイソップ寓話に見いだせるかもしれない。つまるところ、トランプ氏は国家の実体について問題提起していることは疑いようがない。その観点からすれば、同氏に対し経済的、財政的な議論をしてみたところで的外れのように思われる。
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