もっと身近な例でたとえてみよう。かりに見知らぬ人があなたの隣人の家に忍び込み何かを盗んでいるのを目撃したら、おそらくあなたは警察を呼ぶだろう。他方、もし自国の軍隊が隣国の土地を占領した結果、あなたが何らかの恩恵を得られる場合、そのような軍事行動に抵抗し領土の返還を求めるだろうか?
あなたに強固な倫理観ないし道徳心があればそうするのかもしれないが、もしあなたが経済的に困窮し、隣国に親しみを感じていない場合、占領が自分に財産をもたらしてくれる機会になるとは考えないだろうか?
人間は身近な個人的な事柄に関しては慎重に考える向きが多いが、直接利害関係のない組織的な動きに対しては注意を払わなくなる。
国民国家の意味に立ち戻って考えてみれば、ある国の現在の領土は、多かれ少なかれ過去における一定の指揮の下で統率された軍隊の努力の賜物とも言えるのではないか。歴史は、既存の国境が利害関係者間の単なる協議によってではなく、大方武力の行使や威嚇により画定されてきたことを示している。
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